KOMA KOMAのコンセプト

アニメーションを,作って,見て,ふりかえる—

KOMA KOMAは、「アニメーションと教育をつなぐ」ことをテーマとして、アニメーション作家/研究者の布山タルトが開発したコマ撮りアニメーション制作アプリです。

KOMA KOMAには大きく二つの特徴があります。

一つは、非常に素朴で単純なユーザーインターフェイス。子どもでも一分もあれば操作を理解し、アニメーション制作を楽しむことができるでしょう。

そしてもう一つはふりかえりのための機能があるという点です。自分の作った作品を見返したり、何人かでお互いの作品を見比べたり。壁にポストイットを貼るように、気軽に画面上でアニメーションのクリップを配置して、ダイアグラム化したりコメントをつけたりすることができます。

ふりかえり機能の目的は、作品の評価を行うことよりもむしろその場におけるコミュニケーションを誘発し、学びを引き出すことにあります。KOMA KOMAは、アニメーションを、作って、見て、ふりかえる—そうしたプロセスを他者と共有することで生まれる「遊び」と「学び」が絡み合った密度の濃い経験を生み出すことを目指しています。

開発の背景

子どもを対象としたアニメーション制作のワークショップは、1960年代頃から世界各地で開催されています。その多くは、アニメーション作家が個人レベルで実施するもので、優れた実践は多くあるものの、広く一般化することはありませんでした。しかし2000年代以降、インターネットの動画共有サイトが普及するに伴い、映像制作のハードルは下がり、アニメーション制作のワークショップ実践がこれまで以上に広い範囲で行われるようになっています。

教育現場においても、図工/美術の時間だけでなく、技術の時間、情報の時間、理科の時間など、さまざまな教科においてアニメーション制作を活用する事例も出てきています。いわばアニメーションの専門家ではない人たちが、アニメーションのもたらす「楽しさ/Fun」の効果に着目し、それぞれの教育実践に取り入れようと模索しているのです。

こうした状況は喜ばしい反面、それが単なる目新しさや「子どもが喜ぶから」というだけの理由でアニメーション制作を導入する例が少なくないのではないでしょうか。より根源的に「なぜアニメーションなのか?」「アニメーションを作ることの教育的な意味は何か?」といった問いに対して、きちんとした検証と理論の構築を行うべき時期に来ているように思います。

KOMA KOMAの開発は、単に手軽で便利なコマ撮りアニメーション制作支援を目指したものではありません。「アニメーションによる教育の可能性」を実証し、理論構築することを目指した実験プラットフォームにすることを目指しているのです。

ふりかえり(Reflection)の意義

「ふりかえり」という言葉は、教育学や認知科学の世界で、「内省」や「省察」などの言葉と並んで、”Reflection”の訳語としてしばしば用いられる言葉です。単に過去をふりかえる、いわば「復習」の活動ではなく、むしろ新たな発想や気づきを得るための、未来へ向けたプロセスだといえるでしょう。

認知科学辞典では以下のように説明されています。

 「自分自身の考え方ややり方について意図的に吟味するプロセス.獲得した認知的技能や知識をデータとして新たな技能・知識を作り出す批判的思考力ともいえる.認知プロセスが外化されていると内省の対象として比較対照,編集などの操作がしやすくなり,内省が促進される.…」(日本認知科学会編『認知科学事典』共立出版, 2002)

「外化」というのは、抽象的な概念やプロセスの視覚化です。いわばKOMAKOMAのふりかえり機能は。アニメーションの制作プロセスを効果的に「外化」することを目指した機能だといえます。